研究活動

論文発表実績はこちら

圧電・焦電効果を利用したエネルギー変換材料の研究

近い将来、モノのインターネット(IoT)が爆発的に普及し、各種のセンサが私たちの身の回りにたくさん溢れることが予測されています。ここでは、安定的かつ自発的に給電できる新しい方法や、これを支える材料開発にも注目が集まっています。 例えば、日常生活の様々なシーンで生じる振動や工場で使用されない廃熱といった、これまで未使用の希少なエネルギー源を再生利用するエネルギー変換材料があれば、電池交換が不要となるような自立給電型のデバイスが登場するかもしれません。

セラミックスとポリマーとの複合化技術を使うと、柔軟性を兼ね備えたエネルギー変換材料をつくることができるため、圧電・焦電効果を活かして様々な形態の余剰エネルギーを刈り取ること(エナジーハーベスト)が可能となります。

クリックして拡大

無鉛圧電材料の信頼性評価と疲労メカニズムの解明

安心安全や環境調和といった意識の高まりからスタートした、鉛を含まない圧電セラミックスの研究は、材料組成や合成法を探索するステージから、次の段階に進みつつあります。例えば、初期性能の向上を目指すだけでなく、実際の使用環境を想定した信頼性の向上も狙った研究などです。

今後、電子デバイスが利用されるシーンが、次世代自動車、ロボット、航空・宇宙、医療へと拡がることが予測され、従来よりも更に特殊な環境や極限環境下であっても、疲労せず、長期間に渡って高性能を維持することが求められます。

そのためには、各種の高負荷環境が再現できるような実験評価技術と、高信頼性のデータを収集・解析する手法の開発によって、未知である無鉛圧電材料の疲労現象を解明する必要があります。圧電セラミックスが示す誘電緩和現象を精密に捉えることで、新しい疲労メカニズムを提案していきます。

クリックして拡大

高負荷環境下における無鉛圧電材料の電気機械物性

エアランゲン-ニュルンベルク大学(ドイツ)のKyle G. Webber教授との共同研究では、無鉛圧電セラミックスの電気機械物性について調べています。

ABO3ペロブスカイト構造をもつ変位型強誘電体では、Bサイトイオンの変位に由来する自発分極が存在し、この自発分極方位が整列した領域はドメインと呼ばれます。圧電特性は、セラミック粒子の内部にあるナノメートル・サイズのドメイン構造に大きく依存することが知られています。

ドメインは外場(電界・応力・温度)によって、伸縮や回転など様々に変形し、その挙動は、歪みとして電気機械物性にも明瞭に現れます。例えば、圧電セラミックスに圧縮応力を加えつつ、同時に電界も加えると、高負荷状態(200MPa)では、歪み量が大きく低減することが計測され、顕微鏡でしか見えないドメインの動きが抑制された様子を示すことができます。つまり、ナノメートルの動きさえも見逃しません。

クリックして拡大

3次元ナノ構造制御による高機能触媒の創製

持続可能な社会の実現には、化学資源やエネルギーを効率的に生産可能な、環境に優しいプロセスが必要不可欠です。酸化物をベースとした触媒は化学的に安定で、回収も容易であるため、環境に負荷を与えない触媒材料として期待されています。

ナノ粒子は、バルクとは異なる表面状態から、高い触媒機能を示すことが知られていますが、一方で、回収が容易でなく、不安定であることがしばしば問題となります。

私たちは、特に反応性が高いシングルナノオーダー(10 nm以下)の触媒微粒子を、3次元に規則的に集積させることで、ナノ粒子の欠点であった安定性・耐久性・回収性を両立させようと試みています。また、集積したナノ粒子の間で、新規な触媒活性が得られると期待しています。3次元ナノ構造の制御により、化石燃料や資源に頼らない社会の実現を目指します。

クリックして拡大

セラミックスの付加製造技術と多孔体の科学

エアランゲン-ニュルンベルク大学(ドイツ)のTobias Fey講師との共同研究では、付加製造技術によるセラミックスの造形とその応用について取り組んでいます。

付加製造技術は、成形段階で3次元的な複雑造形を取り入れ、焼成後にその形状を活かして新たな機能を与えるもので、化学的性質、力学的性質、電気的性質などを大きく変化させることができます。これまでに、多様な多孔質セラミックスの造形や、ブロック状の積み木構造をもつ、ユニークなセラミックスを造形してきました。

優れたセンサ定数を示す圧電材料の研究例を始め、最近では、人体の組織・性質を模倣したインプラント材料の研究も開始し、その素材として、生体親和性に優れた無鉛圧電セラミック材料も候補になるのではと期待を寄せています。

クリックして拡大

環境・バイオ応用を目指す無鉛圧電材料の生物学的評価

インド工科大学バラナシ校(インド)のAshutosh K. Dubey助教との共同研究では、圧電体の機能を活用して新たな応用分野を切り拓くことを想定し、環境・バイオ関連分野の探索を行っています。

私たちの身体は圧電性と密接に関係しており、様々な器官で圧電特性が現れています。圧電材料の表面に誘起される電荷は、細胞を刺激し組織の再生を促進すること、大腸菌等のバクテリアに対して優れた抗菌性を示すことなどが報告されています。

無鉛圧電材料は環境と人体に与える影響が少ないため、これまでのように優れた電気機械特性の応用だけに留まらず、新しい環境材料や生体材料としても諸特性を活かせる可能性を秘めています。新しい用途の開発を目指して、生体親和性をキーワードとし生物学的評価を試みています。

クリックして拡大
論文発表実績はこちら